かつては、俺の記憶が確かならば、俺の生活は宴であった、誰の心も開き、酒という酒はことごとく流れ出た宴であった。
ある夜、俺は『美』を膝の上に坐らせた。---苦々しいやつだと思った。---俺は思いっきり毒づいてやった。
俺は正義に対して武装した。
俺は逃げた。ああ、魔女よ、悲惨よ、憎しみよ、俺の宝が託されたのは貴様らだ。
俺はとうとう人間の望みという望みを、俺の精神の裡に、悶絶させてしまったのだ。あらゆる歓びを絞殺するために、その上で猛獣のように情け容赦もなく躍り上ったのだ。
俺は死刑執行人らを呼び、絶え入ろうとして、奴らの銃の台尻に咬みついた。連枷を呼び、血と砂とに塗れて窒息した。不幸は俺の神であった。泥の中に寝そべり、罪の風に喉は涸れ、しかも俺が演じたものは底抜けの御座興だった。
こうして春はむごたらしい痴呆の笑いをもたらした。
ところが、ついこの間の事だ。いよいよ最後のへまも仕出かそうとなった時、俺は昔の宴の鍵はと思い迷った、存外また食気が起こらぬものでもあるまい、と。
慈愛はその鍵だ。---こんな考えが閃いたところをみれば、俺は確かに夢を見ていたのだ。
「お前はやっぱり鬛狗でいるさ……」などと、いかにも可憐な罌栗の花で、俺を飾ってくれた悪魔が不服を言う。「死を手に入れる事だ、お前の欲念、利己心、七大罪のすべてを抱えて」
ああ、そんなものは、もう、抱えきれぬほど抱え込んでいるよ、---ところで親愛なる悪魔、お願いだ、そんな苛立たしい眼つきをしないでくれ。ぐずぐずしていれば、いずれ、しみったれた臆病風に見舞われる、どうせ貴方には作家の描写教訓の才などというものはご免だろう。俺の奈落の手帖の目も当てられぬ五、六枚、では、貴方に見ていただく事にしようか。
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